◇いとしの愛車(車編)
いとしの愛車
――日産ガゼール・ハッチバック
クルマにも、それぞれに「思い出」があります。
今のように便利な装備が当たり前ではなかった頃、私が中古車で譲り受け、約3年間乗った愛車がありました。
それが、日産ガゼール・ハッチバックです。
今思えば、なかなか味のあるクルマでした(笑)。足回りは少し硬め。乗り心地は決して「ふわふわ快適」という感じではなく、路面の感触がしっかり伝わってくるタイプでした。そして、もちろんマニュアルシフト。さらに、今ではすっかり見かけなくなったフェンダーミラー。「オールドタイプだなぁ」と笑ってしまいますが、当時はそれが普通。むしろ、それがカッコよかったのです。
テニス道具を積んで、いざ出発!
ガゼールは、日頃の移動だけでなく、私のテニス生活にもずいぶん活躍してくれました。
ラケット、シューズ、ウェア、バッグ……。テニスの練習や試合へ行くときには、いろいろな荷物を積み込んで出発。そして休日には、少し遠くまでドライブです。
軽井沢、山中湖、河口湖、熱海、箱根。。。
テニスの予定とドライブを組み合わせながら、いろいろな場所へ走りました。今ならナビに目的地を入れれば、あとは案内に従って走るだけですが、当時は地図を見ながら道を探すのも旅の一部。「次の交差点はどこだ?」「この道で合っているかな?」そんなことを考えながら走った時間も、今となっては懐かしい思い出です。
ガゼールが教えてくれた「運転」
マニュアル車に乗っていると、自然と運転そのものを意識するようになります。
特に印象に残っているのが、坂道発進。アクセル、クラッチ、ブレーキ。それぞれの操作をうまく合わせなければ、エンストしてしまいます。「半クラッチ」という言葉も、単なる運転用語ではありません。クラッチのつながり具合を足で感じながら、クルマを動かしていく。何度も運転しているうちに、その感覚が少しずつ身についていきました。そして、坂道を下るときにはエンジンブレーキの大切さも覚えました。ブレーキペダルだけに頼るのではなく、ギアを適切に選び、エンジンの力も利用して速度をコントロールする。今振り返ると、ガゼールは単なる移動手段ではなく、私に「クルマを操る」という感覚を教えてくれた存在だったのかもしれません。
約3年間の相棒
中古車として私のところへやってきたガゼール。約3年間という時間でしたが、日常の移動からテニスの練習、試合、そして遠出のドライブまで、本当によく走ってくれました。硬めの足回り、マニュアルシフト、フェンダーミラー、そして、坂道発進に半クラッチ、エンジンブレーキ……。今のクルマと比べれば、ずいぶん「手のかかるクルマ」だったのかもしれません。でも、その分だけ、自分でクルマを動かしているという実感がありました。テニスもクルマも、昔は今より少し「自分でやること」が多かったように思います。だからこそ、苦労したことも、失敗したことも、思い出として残っているのでしょう。
軽井沢へ向かう道。山中湖や河口湖へ向かう道。熱海、箱根へ続く坂道。そこには、テニスバッグを積んだガゼールと、若かった頃の自分がいました。
日産ガゼール・ハッチバック。
約3年間の付き合いでしたが、私の青春とテニスの時間を一緒に走ってくれた、忘れられない「いとしの愛車」です。時代が変わり、クルマもずいぶん進化しました。それでも、あの頃のハンドルを握った感触や、クラッチをつないだ足の感覚は、今でも不思議なくらい覚えています。
クルマは走り去っても、思い出までは走り去りません。
「いとしの愛車」――ガゼール。
懐かしい一台です。

