「コーチの休日」

【コーチの休日】
スカイツリーの足元で、下町の時間を楽しむ。
―押上・向島散策―
テニスコートに立っていると、一日は瞬く間に過ぎていきます。
レッスンではボールを追い、フォームを確認し、皆さんとともに汗を流す。そんな日々を過ごしていると、休日には、時間の流れが少しゆるやかに感じられる場所へ出掛けたくなることがあります。
今回訪れたのは、東京・墨田区の押上から向島界隈。
目的は、東京スカイツリーを眺めること。そして、華やかな観光エリアだけでなく、その足元に残る下町の風情を歩いて楽しみ、最後は向島の居酒屋でゆっくり食事をすることです。
スカイツリーのある街、その前は?
現在の押上を歩くと、まず目に入るのは、高さ634メートルを誇る東京スカイツリーです。今回撮影した写真からも、青空に向かって伸びるスカイツリーの存在感が伝わってきます。
しかし、この地域が昔から現在のような観光都市だったわけではありません。
押上・向島一帯は、江戸時代から浅草や隅田川に近い土地として、人々の暮らしや文化が育まれてきた地域です。特に向島には、花街や料亭、和菓子など、江戸・東京らしい文化が息づいてきました。
現在も、大通りから少し路地へ入ると、昔ながらの住宅や商店、細い道路が残っています。その風景の中に、突然、巨大なスカイツリーが現れる。
この「新しい東京」と「昔ながらの東京」が同じ風景の中に共存していることが、押上・向島の大きな魅力なのだと思います。
押上の街を大きく変えた東京スカイツリー
押上の風景が大きく変わるきっかけとなったのが、東京スカイツリーの建設です。
東京スカイツリーは2008年に着工し、2011年に高さ634メートルに到達。2012年5月22日に開業しました。建設の背景には、都心部の高層ビルによる電波障害への対策として、600メートル級の新たな電波塔が必要になったことがあります。
そして、建設されたのはタワーだけではありません。
周辺には東京スカイツリータウンが整備され、商業施設「東京ソラマチ」をはじめ、すみだ水族館、プラネタリウム、オフィスなどが集まる大規模な街が誕生しました。東京ソラマチには300を超える店舗が入り、買い物や食事を目的に訪れる人も多くなりました。
かつての「押上」という地名から想像される街と、現在の押上の姿。
その変化には、改めて驚かされます。
それでも、下町は残っている
一方で、スカイツリーを背にして少し歩くと、街の表情は変わります。
大規模な商業施設から一本路地に入ると、昔ながらの建物や小さな商店が見えてきます。
今回の散策でも、そうした街並みに強く惹かれました。
写真に写る衣料品店も、華やかな観光施設とは異なる、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。
ショーウインドーに並ぶ洋服。
少し年季の入った建物。
道路沿いに並ぶ住宅。
そして、その向こうに見える東京スカイツリー。
この組み合わせには、何ともいえない趣があります。
「昔の東京が消えてしまった」のではなく、「昔の東京のすぐ隣に、新しい東京ができた」。
そのように表現するほうが、この街の姿を的確に表しているように感じます。
散策の後は、向島界隈へ向かいました。
ここからは、観光というよりも、地元の日常に触れるような気持ちで過ごします。
せっかくの休日ですから、しばらく歩いた後は居酒屋に入り、カウンターでゆっくり料理を味わいます。写真に写る刺身や揚げ物、豆腐と肉を使った料理など、いずれも気取った料理ではありません。しかし、こうした料理こそ、休日の食事にはちょうどよいものです。冷たい飲み物を一杯。料理を一品。
そして、その日に歩いた街のことを思いながら、もう一品。
普段、テニスコートでは「次のボール」「次のポイント」と先のことを考えながら動いています。
だからこそ、休日には目の前の料理をゆっくり味わう。
そのような時間も大切だと感じました。
「変わらないもの」と「変わっていくもの」
押上・向島を歩いていると、街というものの奥深さを感じます。
かつて存在しなかった巨大な建造物が街の象徴になる一方で、昔から続く商店や住宅、飲食店、路地の風景も残っています。東京スカイツリーは「江戸の伝統美」と「未来」をつなぐランドマークとして紹介されています。
今回、実際に街を歩いてみて、その意味を少し理解できたように感じました。
新しいものが古いものをすべて消してしまうのではなく、古い街並みの中に新しいものが加わっていく。
その両方が存在するからこそ、この街には独特の魅力があります。
テニスコーチの休日というと、「遠出をして、思い切り楽しむ」というイメージもあるかもしれません。もちろん、それも楽しい過ごし方です。しかし、今回のように電車で出掛け、知らない路地を歩き、スカイツリーを見上げ、昔ながらの店を眺め、最後に居酒屋でゆっくり食事をする。そのような休日も、非常に有意義なものです。
テニスも同じなのかもしれません。
速いボールを打つことだけがテニスではない。
時には、ゆっくりとラリーを楽しむ日があってもよい。
休日も、常に全力で過ごす必要はありません。
街を歩く。
景色を眺める。
美味しいものを味わう。
そして、また次の一週間を元気に迎える。
今回の押上・向島散策は、そんな「少し贅沢な、いつもの休日」になりました。
次の休日は、また別の下町を歩いてみたいと思います。
上尾グリーンテニスクラブのコーチの休日。
コートの外で見つけた東京の風景も、引き続き皆さんにご紹介します。
