◇スポーツは楽しい!
『祭りのあとに、新しい風が吹く。
WBCの熱狂がテニスを救う理由』
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での侍ジャパンの活躍、凄まじいですね。日本中が一つになって、普段は野球を観ない人までが大谷翔平選手のプレーに一喜一憂です。
一方で、テニスファンとしては少し寂しい思いもあります。かつては錦織圭選手や大坂なおみ選手の活躍で地上波でも頻繁に放映されていましたが、最近はその機会も減り、「テニス人気はどこへ行ったの?」と感じることもあるでしょう。
しかし、私はあえてこう言いたいのです。「野球が、あるいは他のスポーツが盛り上がるほど、巡り巡ってテニスも盛り上がる」。これは気休めの予言ではありません。日本人の国民性や、最新のスポーツ事情を踏まえた、とても現実的なステップがあるのです。
今回は、その理由を3つのステップで紐解いてみましょう。
1. 「観る習慣」が心に火をつける
まず、日本人の大きな特徴として、「物語を共有して熱狂する」という性質があります。WBCが盛り上がったのは、単に野球という競技が面白かったからだけではありません。「世界一に挑む」「強敵に立ち向かう」というドラマに日本中が共感したからです。
スポーツを観て感動すると、私たちの心には「あんなふうに一生懸命になりたい」「スポーツっていいな」というポジティブな余韻が残ります。この「心の温度が上がった状態」こそが重要です。
一度スポーツの熱狂を味わった人は、次に面白い試合があれば、種目を問わず反応しやすくなります。WBCで「応援する楽しさ」を思い出した視聴者は、テニスで日本人が世界を相手に戦う姿を目にしたとき、以前よりもずっと熱心なサポーターになってくれる土壌ができているのです。
2. 「マルチスポーツ」という新しい常識
次に、最近のスポーツ科学や教育の現場で注目されている「マルチスポーツ(多種目経験)」という考え方があります。
昔の日本では「一つの道を極める」ことが美徳とされてきましたが、今は違います。子供の頃に複数の競技を経験したほうが、結果的に一つの競技でも高いパフォーマンスを発揮でき、ケガも少ないことが分かってきました。
例えば、野球で培った「動体視力」や「投げる動作(肩の使いかた)」は、テニスのサーブやスマッシュに驚くほど直結します。
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野球の熱狂で「子供にスポーツをさせたい」と思う親が増える
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野球だけでなく、足腰やバランス感覚を養うためにテニスも習わせる
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その中から、将来のテニス界を担うスター候補が生まれる
このように、他のスポーツへの入り口が広がることは、テニス人口の裾野を広げる絶好のチャンスなのです。
3. 「地上波」の枠を超えた新しい「盛況」
確かに、地上波での放映は減りました。しかし、それは「人気がなくなった」のではなく、「楽しみ方が進化した」とも捉えられます。
WBCをスマホやタブレットで隙間時間にチェックした人も多かったはずです。今の時代、SNSや動画プラットフォームは、かつての地上波以上の拡散力を持っています。
WBCで「スポーツのショート動画を観る」習慣がついた人々は、テニスの驚異的な股抜きショットや、目にも止まらぬ高速ラリーの動画にも、自然と指を止めるようになります。他のスポーツの盛り上がりが、デジタルの世界でテニスの魅力を再発見させるきっかけを作っているのです。
まとめ:すべてのスポーツは繋がっている
スポーツは、一つのパイを奪い合うライバルではありません。誰かがスポーツで感動すれば、そのエネルギーは必ず他の競技にも伝播します。
WBCで野球が盛り上がった今、日本人の「スポーツへの関心」は最高潮に達しています。この熱気が冷めないうちに、テニスの「格好良さ」や「奥深さ」を、新しいツールを使って伝えていく。そうすれば、テニスコートにも再び活気が戻ってくるはずです。
テニスは、一度その面白さを知れば一生続けられる「生涯スポーツ」でもあります。野球から始まった熱狂のバトンを、次は私たちがテニスコートで受け取ってみませんか?
